道標を兼ねた庚申塔

「右 ◯◯道/左 ◯◯道」と刻まれた庚申塔(こうしんとう)があります。

道標(どうひょう)を兼ねています。


どういう形で現れるか

正面 … 「庚申塔」「青面金剛」(+図像)
側面 … 「右 ◯◯道」「左 ◯◯道」
    「これより ◯◯まで ◯里」

正面と側面で用途が違います。

信仰の対象であると同時に、実用的な案内板になっています。


なぜ兼ねられたのか

① 立っている場所が同じ

庚申塔が立つ場所 … 辻・分岐・坂・村境
道標が要る場所  … 辻・分岐

完全に重なります。

分かれ道に石を建てるなら、両方の役目を持たせるのが合理的です。

→ 庚申塔はどこにあるのか

② 石を建てる機会が限られていた

・石を切り出し、彫り、運ぶのは費用がかかる
・[庚申講](/koushinkou/)が節目に建てるという機会がある
・その機会に道標も刻んでおく

1本で2つの用途を満たします。

③ 道の神としての性格

・[猿田彦](/sarutahiko/)は道案内の神
・道祖神は村境の神
・庚申塔もこの系統に位置づけられることがある

「道」との結びつきは、庚申塔の性格そのものにあります。


読むときのポイント

□ どの面に道標が刻まれているか
  → 道の方向と対応している
□ 地名を読む(現在の地名と違うことがある)
□ 距離の単位(里・町)
□ 「これより」「是より」の文字

地名が現在と違うのが面白いところです。

・旧国名・旧郡名
・合併で消えた村名
・宿場・寺社の名前

その道が何のための道だったかが読めます。

・寺社への参詣道
・宿場をつなぐ道
・市場へ向かう道

→ 庚申塔に刻まれた文字を読む


移設されていることがある

道標を兼ねた塔ほど、移設のリスクが高いです。

・分岐にあるということは、道路工事の対象になりやすい
・拡幅・区画整理でどけられる

移設されると、指している方向が意味を失います。

「右 ◯◯道」と刻まれているのに、
右を向いても何もない

これは移設のサインです。

元の位置は、自治体の資料で分かることがあります(→ 資料と本)。


他の石造物も道標を兼ねる

・[馬頭観音](/batou/) … 街道沿いに多い
・[二十三夜塔](/nijuusanya/)
・地蔵
・純粋な道標(信仰要素なし)

「道標を兼ねる石造物」という括りで見ると、 庚申塔はその一種です。

逆に言えば、道標があるからといって庚申塔とは限りません。

「庚申」の字か三猿を確認します(→ 庚申塔の見方)。


刻まれた道をたどる


まとめ

  • 「右 ◯◯道」と刻まれた庚申塔があります。道標を兼ねています
  • 正面は信仰、側面は実用の案内
  • 兼ねられた理由は3つ。立つ場所が同じ/石を建てる機会が限られていた/道の神としての性格
  • 辻・分岐という立地が完全に重なります
  • 読むときは面の向き・地名・距離の単位。地名が現在と違うのが面白い
  • その道が何のための道だったかが読めます
  • 方向が合わないのは移設のサイン
  • 道標があるからといって庚申塔とは限りません。「庚申」の字か三猿を確認します

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