庚申塔はお墓なのか

庚申塔(こうしんとう)は墓ではありません。

ただし紛らわしい理由がいくつかあります。順に見ていきます。


なぜ墓に見えるのか

① 石でできている。形も墓石に似ている
② 「庚申供養塔」と刻まれている(「供養」の字がある)
③ 人名が刻まれている
④ 墓地の入口に立っていることがある
⑤ 花や供え物がある

③がいちばん誤解を生みます。

人名があると、その人の墓に見えます。


人名は「建てた人」

墓に刻まれるのは【亡くなった人】の名前。 庚申塔に刻まれるのは【建てた人】の名前です。

庚申塔 … [庚申待](/koushinmachi/)を営んだ人たちの連名
     → 十数名〜数十名
     → 建てた時点では、全員生きている

これが決定的な違いです(→ 文字を読む)。


では「供養」とは何か

「庚申供養塔」の「供養」は、何を供養しているのでしょうか。

説明として伝わっているもの:

① 行事そのものを供養する
  → 庚申待を営んだことへの供養

② 逆修(ぎゃくしゅ)の意味
  → 生きているうちに、自分のために功徳を積む
  → 「二世安楽」(現世と来世の安穏)という願文と結びつく

③ 先祖の供養も兼ねる

②が興味深いです。

生前に自分のために建てるという発想は、 墓とはまた違う形です。

ただしこれも断定はできません。 地域差があり、確定した説明にはなっていません。


墓地の入口に立つ理由

・境界の意味がある
  → 墓地は日常とは別の場所。その境に石造物を置く
・[道祖神](/dousojin/)が村の境に立つのと同じ発想
・人が通る場所だから

墓地の中ではなく、入口に立っていることが多いです。

これも「墓ではない」ことの手がかりです。


供え物がある場合

・世話をしている人がいる
・墓参りのついでに供えられることがある
・地域の行事として続いていることもある

供え物を動かさないでください(→ 写真を撮るときに)。


墓じまいとの関係

実務上、混ざることがあります。

・墓を整理する際、敷地内の石造物も一緒に検討される
・庚申塔が墓地の一角にある
・どちらも「引き継ぐ人がいない」という同じ問題を抱える

ただし扱いは違います。

墓   … 墓地埋葬法などが関わる
庚申塔 … 文化財としての扱いが関わる可能性がある

庚申塔は文化財担当課、墓は別の手続きです。

→ 撤去したいとき・管理を引き継ぐ人がいなくなったら


まとめ

  • 墓ではありません
  • 誤解される理由は5つ。とくに人名が刻まれていること
  • 墓は亡くなった人の名前、庚申塔は建てた人の名前
  • 建てた時点では、刻まれた人は全員生きている
  • 「供養」の意味は諸説。**逆修(生前に自分のために功徳を積む)**という説明があります
  • 墓地の入口に立つのは、境界の意味と人が通る場所だから
  • 墓じまいと混ざるが、扱いは違います。庚申塔は文化財担当課

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