庚申塔に刻まれた文字を読む
庚申塔(こうしんとう)は庚申待という行事の記念碑です。
記念碑なので、記録が刻まれています。 これが道祖神などとの決定的な違いです(→ 道祖神との見分け方)。
刻まれるもの
① 主題 … 「庚申」「庚申塔」「庚申供養塔」「青面金剛」「猿田彦大神」
② 造立年 … 元号+年+月+日
③ 講の名前 … 「庚申講中」「講中」
④ 人名 … 参加した人の名前(十数名〜数十名)
⑤ 願文 … 「二世安楽」「所願成就」など
⑥ 地名 … 村名など
②と④が記録としての中身です。
造立年の読み方
元号で書かれています。
例:「寛政十二年 庚申 十一月吉日」
・「吉日」は日付を特定しない書き方。よく使われる
・干支が併記されることが多い(庚申・甲子など)
西暦に直す方法は別記事にまとめてあります。
干支が「庚申」になっている塔は、庚申の年に建てられたことになります。 60年に一度の年なので、この年に造立が集中する傾向があります。
人名が刻まれる意味
ここが庚申塔の面白いところです。
・江戸期の庶民の名前が、そのまま残っている
・十数名〜数十名が連名で刻まれる
・「施主」「世話人」と役割が書かれることもある
個人の墓ではないのに、名前が残ります。
これは「講という集まりが建てた」ことの証拠です (→ 庚申講)。
地域史の資料としての価値がここにあります。 その村に誰が住んでいたかが分かります。
読みにくい理由
① 風化している
→ 数百年、屋外にある
② 異体字・旧字が使われている
→ 「廿」=二十、「圓」=円 など
③ 変体仮名が混じることがある
④ 苔や汚れで覆われている
④について。
✕ こすって落とす
→ 石を傷める。文化財の場合は問題になりうる
◎ 何もしない
→ 自治体が調査記録を持っていることが多い
勝手に清掃しないでください(→ 写真を撮るときに気をつけること)。
読めないときの調べ方
自治体の資料が最も確実です。
・市区町村の文化財リスト
・教育委員会が出している石造物調査報告書
・郷土資料館・博物館の展示
多くの自治体が、石造物の悉皆調査(全数調査)を行っています。 その報告書には、銘文が活字で起こされていることが多いです。
読めない文字は、たいてい先に誰かが読んでいます。
「不詳」と書かれていることもある
自治体の資料でも読めていない場合があります。
・風化が進みすぎている
・もともと刻まれていない
この場合は「分からない」が正しい答えです。
記録するなら
自分でメモを残すなら、これだけあれば後で使えます。
□ 場所(所在地の詳細はサイトに公開しない → 方針③)
□ 主題(庚申/青面金剛/猿田彦)
□ 造立年(読めた範囲で)
□ 図像の有無(三猿・日月・鶏・ショケラ・邪鬼)
□ 石の形(板碑型・角柱型など)
□ 読めなかった箇所
最後の1行を書いておくと、後で見返したときに役立ちます。
まとめ
- 庚申塔は記念碑なので、記録が刻まれています
- 刻まれるのは主題・造立年・講の名前・人名・願文・地名
- **人名が残るのが特徴。**個人の墓ではないのに名前があります
- これは講が建てた証拠であり、地域史の資料になります
- 読みにくい理由は風化・異体字・変体仮名・苔
- **こすって落とさないでください。**石を傷めます
- 自治体の石造物調査報告書に銘文が活字化されていることが多いです