庚申塔の拓本とスケッチ

庚申塔をイラストやスケッチに残す方法として、先に書きます。庚申塔(こうしんとう)の拓本には許可が要ります。スケッチには要りません。


拓本について

石に紙を当てて、彫りを写し取る技法です。

・銘文が非常に読みやすくなる
・調査報告書に使われる

だが、勝手に取ってはいけません。

① 所有者・管理者の許可が要る
   → [所有者が不明な庚申塔は多い](/shoyuusha/)

② 文化財に指定されている場合は、
    自治体の許可が別に必要になりうる
   → 現状変更にあたる可能性がある

③ 石を傷める可能性がある
   → 湿らせる/叩く/薬品を使う
   → 風化した石は脆い

④ 技術が要る
   → 失敗すると石に跡が残ることがある

①②の確認が取れないなら、やりません。

まず自治体の文化財担当課に確認するのが順序です (→ 文化財に指定されている場合)。


銘文を読みたいだけなら

拓本を取らなくても方法があります。

① 斜光で撮る
   → 朝夕の斜めから当たる光
   → 彫りの陰影が出て読める
   → → [写真を撮るときに](/shashin/)

② 自治体の調査報告書を見る
   → 銘文が活字に起こされていることが多い
   → → [資料と本](/shiryou/)

②がいちばん早いです。

読めない文字は、たいてい先に誰かが読んでいます。


スケッチという方法

許可が要らず、しかも観察が深まります。

・見るだけでは気づかないところを見る
・写真では潰れる浅い彫りに気づく
・時間をかけて1基と向き合う

描く行為そのものが観察になります。


何を描くと発見があるか

① [邪鬼](/jaki/)の表情
   → 苦しそう/あきらめ顔/のんき
   → 描こうとすると、初めて表情を見る

② [三猿](/sanzaru/)の姿勢
   → 並んで座る/絡み合う/立つ
   → 手の位置が塔ごとに違う

③ [青面金剛](/shoumen-kongou/)の持ち物
   → 組み合わせが一定していない
   → 描くと「これは何だ」が出てくる

④ [ショケラ](/shokera/)の姿
   → 提げ方・向き

⑤ 石の形と欠け
   → どこが失われているか

③④は描いて初めて疑問が出ます。


記録として残す形

□ 略図でよい(うまく描く必要は無い)
□ 寸法を添える(おおよそでよい)
□ 読めた文字を書き込む
□ 読めなかった箇所に印をつける
□ 撮影日・場所(自分用のメモ)

4つ目を入れておきます。

後で資料と突き合わせるとき、 「読めなかった」の記録が効いてきます(→ 庚申塔の見方)。


やらないこと

✕ 水をかける(石を傷める)
✕ チョーク・墨を溝に入れる(汚損)
✕ 苔をこすり落とす
✕ 石に紙を留めるためにテープを貼る
✕ 寄りかかる・物を立てかける

「読みやすくするための加工」は全部やりません。


描いたものを公開するなら

◎ 図像・スケッチを出す
◎ 「◯◯市内で見た」程度の場所の書き方
△ 詳細な地図・座標
✕ 私有地内のものを、場所が特定できる形で

所在地の公開は、立ち入りや盗難につながることがあります。

→ 写真を撮るときに気をつけること


遠方で描くなら

地域によって図像の型が違います。

同じ主題を別の地域で描き比べると、違いがはっきり出ます。


まとめ

  • **拓本には許可が要ります。**所有者・管理者、文化財なら自治体
  • **石を傷める可能性があります。**風化した石は脆いです。技術も要ります
  • 銘文を読みたいだけなら斜光で撮る/調査報告書を見る
  • **調査報告書がいちばん早いです。**読めない文字は先に誰かが読んでいます
  • スケッチは許可が要らず、観察が深まります
  • 描くと発見があるのは邪鬼の表情・三猿の姿勢・持ち物・ショケラ・欠け
  • 記録には**「読めなかった箇所」の印**を入れます
  • 水・チョーク・墨・テープを使いません

関連